背景
KEGG では、疾患とは生体システムを司る分子ネットワークがゆらいだ状態であるとみなしています。疾患の遺伝要因と環境要因、それに医薬品は分子ネットワークへのゆらぎ物質です。単一遺伝子疾患、多因子性疾患、感染症疾患など様々な疾患は、ゆらぎ物質とその相互作用を蓄積することで統一的に扱うことができます。

現在のデータ数 (2025/4/28)
疾患(KEGG DISEASE H番号エントリ)の数 | 2,918 |
病因遺伝子を含む疾患数 | 2,377 |
病因遺伝子の数 | 5,044 |
ネットワークバリエーションマップにある疾患数 | 896 |
ネットワークバリエーションマップの数 | 120 |
疾患パスウェイマップがある疾患数 | 75 |
疾患パスウェイマップの数 | 70 |
ゆらいだ分子ネットワークに関する知識は疾患パスウェイマップとして表現され、KEGG PATHWAY データベースの一部として提供されてきましたが、特定の疾患に限定されていました。現在は KEGG NETWORK データベースのネットワークバリエーションマップとして、幅広い疾患に対し幅広いゆらぎを蓄積する試みがなされています。
KEGG DISEASE データベース
KEGG DISEASE は、疾患の要因となるゆらぎ物質として上の概念図の中で、とくにヒト疾患遺伝子と病原体をリスト化したデータベースです。ゆらぎ物質が分子ネットワークにどのような影響を与えるかの詳細は KEGG NETWORK データベースのネットワークバリエーションマップで表現され、両者は密接につながる形で作成されています。環境因子については、当初は KEGG DISEASE に含まれていましたが、現在は分子ネットワークのつながりが明確なものに限定して、KEGG NETWORK にのみ含まれています。各疾患エントリは H 番号で識別され、ネットワークバリエーションマップへのリンクでゆらいだ分子ネットワークが分かる形になっています(例えば、脊髄性筋萎縮症の疾患エントリ H00455)。治療薬については日本語版では日本の、英語版では米国の医薬品添付文書に適応と記載された医薬品が治療薬フィールドに入っています。
疾患は以下の BRITE 階層ファイルで分類されています。 また日本の法令で定められた疾患との対応づけも行われています。
疾患は以下の BRITE 階層ファイルで分類されています。 また日本の法令で定められた疾患との対応づけも行われています。
ネットワークバリエーションマップ
KEGG NETWORK データベースのネットワークバリエーションマップは上の図で表現した概念を実現したもので、ヒト遺伝子バリアント、ウイルスその他病原体のタンパク質、環境因子など様々なゆらぎ物質が、レファレンスとなる分子ネットワーク (緑色で表現されています) のどこの影響を与え、それがどの疾患と関連しているかを示しています。
疾患パスウェイマップ
KEGG PATHWAY データベースの「ヒト疾患」カテゴリには、疾患パスウェイマップが蓄積されています。
疾患パスウェイマップは、がん、免疫系疾患、神経変性疾患、循環器疾患、代謝疾患などの多因子性疾患が中心で、病因遺伝子は赤字で示されています。また感染症疾患では、病原体の分子ネットワークとヒトの分子ネットワークの相関が表現されています。
Disease マッピング
KEGG Mapper Search ツールには、hsa モードで KEGG DISEASE 疾患エントリにある遺伝子リスト、及び関連するパスウェイに対するマッピングが含まれています。ユーザのデータセットをヒト遺伝子ID か KO で指定し、データセットと疾患の関連があるかを調べることができます。
病因遺伝子と医薬品ターゲットのマッピング
KEGG DISEASE に蓄積されている病因遺伝子、及び KEGG DRUG に登録されている医薬品ターゲットは、KEGG PATHWAY マップや BRITE 機能階層でもしばしば表現されています。病因遺伝子と医薬品ターゲットをマップした (disease/drug mapped) パスウェイマップは hsadd という 5文字の特殊な生物種コードで、BRITE 階層ファイルは hsa 番号の後に _dd をつけた形で識別されます。
例えば hsadd04620 は Toll 様レセプターシグナル伝達経路の disease/drug mapped 版で、色づけには以下の意味があります。
病因遺伝子と医薬品ターゲットのマッピング
KEGG DISEASE に蓄積されている病因遺伝子、及び KEGG DRUG に登録されている医薬品ターゲットは、KEGG PATHWAY マップや BRITE 機能階層でもしばしば表現されています。病因遺伝子と医薬品ターゲットをマップした (disease/drug mapped) パスウェイマップは hsadd という 5文字の特殊な生物種コードで、BRITE 階層ファイルは hsa 番号の後に _dd をつけた形で識別されます。
例えば hsadd04620 は Toll 様レセプターシグナル伝達経路の disease/drug mapped 版で、色づけには以下の意味があります。
- 遺伝子が何らかの疾患と関連づけられている場合はピンクで表示
- 遺伝子(産物)が何らかの医薬品のターゲットである場合はライトブルーで表示
- 遺伝子が疾患にも医薬品にも対応する場合は、ピンクとライトブルーを半分ずつ表示
疾患分類
KEGG では以下の国際標準を利用しています。
Last updated: January 26, 2024